WAWON’s blog

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【ネタバレ有り】映画『ミッドウェイ』感想

 

 

前提

 前提として、筆者は当時の歴史に普通の人よりは詳しいと思う。真珠湾、ドゥーリトル爆撃隊、珊瑚海海戦、ミッドウェイ海戦といったイベント名、爆撃機や軍艦の名前、どの戦闘でどの空母が参加しどの空母が撃沈されたか、ニミッツ、ハルゼー、スプルーアンス山本五十六南雲忠一、山口多門などの提督の名前も把握している。ちなみに艦これは未プレイ。 

 

 

あらすじ(フィルマークスより)

 1941年12月7日の日本軍による奇襲とも言える真珠湾攻撃。戦争の早期終結を狙う山本五十六連合艦隊司令官(豊川悦司)の命により、山口多聞(浅野忠信)や南雲忠一(國村隼)がアメリカ艦隊に攻撃を仕掛けたのだ。大打撃を受けたアメリカ海軍は、新たな太平洋艦隊司令長官に、兵士の士気高揚に長けたチェスター・ニミッツ(ウディ・ハレルソン)を立てた。両国の一歩も引かない攻防が始まる中、日本本土の爆撃に成功したアメリカ軍の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した次なる戦いを計画する。 一方、真珠湾の反省から、日本軍の暗号解読など情報戦に注力したアメリカ軍は、情報部のレイトン少佐(パトリック・ウィルソン)がその目的地をミッドウェイと分析、限られた全戦力を集中した逆襲に勝負を賭ける。そして遂に、アメリカ軍のカリスマパイロット、ディック(エド・スクライン)率いる上空から攻撃をする戦闘機の空中戦と、山口艦長や南雲艦長率いる海上からの戦艦の砲撃の壮絶な激突へのカウントダウンが始まる──。

 

感想

 

良かった点

敵役の日本人を日本人俳優が演じており、ちゃんと「人間」として扱われている

 山本五十六(豊川悦司)、南雲忠一(國村隼) 、山口多聞(浅野忠信)といった日本人俳優が使用されているが、脇役の日本軍人もまともな日本語をしゃべっていたので、エンドロールのキャスト欄は見切れなかったが、推測するに日本人であろう*1*2

 日本人を配役しているだけでなく、ちゃんと日本パートでは日本語で会話しており、また、彼らが当時の戦況・作戦等についてどう考えていたのかがしっかりと描かれていたのが好印象だった。エンドシーンでも「日米双方の軍人に捧ぐ」とあり、日本人にも敬意をもって作られている印象だった。

 

戦闘シーンは空戦を一通り取り揃えており日米双方の視点がある。

 戦闘シーンに戦闘は、水平爆撃、急降下爆撃、雷撃、ドッグファイト、対空射撃といったように一通りのメニューがそろっており、飽きさせない。メインは、主人公の乗機かつ空母を撃沈した急降下爆撃になってくのだが、一方で、日本軍側の対空射撃の登場比率も高く、双方の「爆撃機を落とすのが先か、爆撃成功させるのが先か」の手に汗握る戦いの見せ方は見事だと思った

 

リアルな軍艦・軍用機と衣装

 今の自分は航空機を見て「○○式爆撃機何型だね」なんて言えるほど詳しくはないが、日米ともそれぞれの軍艦・軍用機は非常にリアルに描かれていて、デフォルメ感が無かった。また、意外に軍服が凝っており、日本海軍の詰襟もかっこよかったし、米軍もカーキ色、白服からはじまってバラエティーに富んだ軍服があり、筆者はここにリアルさを感じて没入感が増した。

 

無駄な人間模様が無い

太平洋戦争ものというと、やはりマイケルベイの「パールハーバー」と対比してしまうし、ハワイと浅野忠信というと「バトルシップ」を思い出す。どちらも無駄に若者の恋愛模様を描いており、最初の30分要らないだろと思ってしまうのだが、今作はそれがない。もちろん家族愛はあって、「家族を守るために戦う」という側面を強調しない程度に織り交ぜているくらいだったので、丁度よかった。

 

良くなかった点

CGの質は良くない

前評判でもあまりCGの質は良くないといわれていたが、実際見てみても、悪く言うと、youtubeの広告に出てくる太平洋戦争ものの海戦ゲームのムービーシーンに近い品質に感じた。現在のゲームもムービーシーンを見ると「ここまでゲーム映像って進化したんだ」と感心するが、一方で映画としてみると「この程度の品質?」と思ってしまう。自分の感覚では、軍艦・軍用機のようなオブジェクトと、水しぶきや雲といった環境との一体感が不自然だった。ただこれは、カット割りやカメラアングルが悪いことを意味していないので、迫力が大幅にそがれるわけではない。

 

場面、シーンを詰め込みすぎ

この映画は真珠湾攻撃マーシャル諸島攻撃・ドゥーリトルによる東京爆撃・珊瑚海海戦(ちょっとだけだけど)、ミッドウェイ海戦と、かなりの場面を扱っている。これを2時間強で描き切るのはいくら何でも無理がある。ミッドウェイ海戦も、日本軍によるミッドウェイ諸島攻撃、米軍空母による2回の日本軍攻撃と細かいフェースに分かれている。アメリカ映画として太平洋戦争を描きたければ、真珠湾攻撃とその反撃となるドゥーリトル爆撃は描きたいのは分かるのだが、お蔭で1つの戦闘シーンが短くなっており、満足できないまま場面展開してしまっている。例えば、ミッドウェイ海戦がおきる直前の珊瑚海海戦では空母レキシントンが沈み、空母ヨークタウンが中波して空母戦力が危機的状況になったにも関わらず、戦闘場面が描かれず、ヨークタウンが早期復帰したことが描かれただけだし、ミッドウェイ海戦も飛龍部隊による空母ヨークタウン攻撃(後に自沈)も描かれていないなど、「ミッドウェイ」の名前が冠するにしては、本番に集中できていない。

 

人物も詰め込みすぎ

人物が多すぎる。日本軍側は主要3提督くらいしか出てこないが、米軍側は、ニミッツ、ハルゼー、スプルーアンス(こいつはちょい役だけど)、レイトン(+奥さん)、ドゥーリトル、ディック(+奥さんと娘)、マクラスキー、リンゼー、マレー等々*3の多数の人物が出ており、マクラスキー以下は階級も役割も良く分からず、また途中で戦死する名前付き人物もいるので、非常に人物把握が困難である。ある程度歴史上の人物を知っている筆者でも困難なのだから、知らない人はよりここで困難を感じただろう。ここは前述の場面の詰め込みすぎ問題と関係していて、日本軍と異なり、微妙に米軍側の場面毎の関係者が異なることも影響しているのだろうが、なんとかもっと絞れなかったのか。さらにいうと、ちょっと人物描写がステレオタイプすぎるというか、南雲中将はポンコツだったり、ハルゼー中将はブルの異名通り無頼漢まるだしだったりと、人物の深堀が足りていない印象だった。

 

総評

やはり日本軍をそれなりにちゃんと描いてくれたのが良かったと思う。先週見たテネットよりは100倍分かりやすかったので、正直テネットよりも面白かった。一方、詰め込みすぎで情報過多であり、製作費不足なのかCGの質があまり良くなかったりと、惜しい面もあった。製作費120億円というが、このレベルの映画なら、本当はその倍は必要だっただのではないだろうか。*4

*1:一部には片言だったという感想も聞くので、個人的な判断です。

*2:これも劇場で苗字だけ呼ばれていたので恐らくだが、源田実が副官として登場しているのも渋い。

*3:あとは、勇敢すぎる整備士とか、序盤で黒焦げになる将官とか、事故死する若手パイロットとか、暗号解読する変人とか、とにかくモブでない人物が多い。

*4:私はチャイナマネーとか気にしません。