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【読書感想文】異文化理解力 ~相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養~ エリン・メイヤー著

結局年末年始はこの本しか活字本は読めなかったけど、かなり面白かったので、記録を残す意味を込めて感想を書きます。

 

 

 

「カルチャー・マップ」で異文化を類型化する

 この本の軸となるのは、「カルチャー・マップ」というもので、8つ指標で各国の文化を位置づけたものだ。そして、各章でそれぞれの1つの指標の実例と一般的な傾向、位置が異なる文化同士のコミュニケーションへのアドバイスが書かれている。

 

「カルチャー・マップ」の8つの指標は以下で、それぞれ1本の線の右端と左端の特徴に対して各文化がどの位置にあるのかをマッピングしたものである。

 

①コミュニケーション ローコンテクストorハイコンテクスト

 ローコンテクスト:言いたいことははっきり言う文化。

 ハイコンテクスト:行間や言外の含みが多い文化。

 友人を家に招いた時 に、「お腹すいた?何か食べる?」と聞いた時に、「お腹ぺこぺこ、何か頂戴」というのがローコンテクスト、お腹がすいていても「いえ、お構いなく」と一回が引き下がるのがハイコンテクスト。ハイコンテクストの場合、「遠慮しなくていいよ」とか「あなたのために食べ物作っておいたから」とか言ってあげないとダメ。

 

②評価(ネガティブフィードバック) 直接的or間接的

  直接的評価:ダメ出しをはっきり言う文化

  関節的評価:「こうした方がもっと良くなる」など、間接的に言う文化

 

③説得 原理優先or応用優先

  原理優先:演繹的に「こういう原理で成りなっていますので、結論はこうなります」という文化

  応用優先:帰納法的に「実際の例を見たほうが早い」という文化

 

④リード 平等主義or階層主義

  平等主義:権力に肩書に寄らず平等に接する文化

  階層主義:権力や肩書(身分)によって、振舞いを変える文化
 例えば、平等主義なら、平社員が自分の上司を飛び越えてさらに上の上司に直言するのも当たり前だし、社長も平社員とフランクに会話するなど。階層主義の場合、それらは恐れ多いことでできない。また、階層主義の場合は、偉い人は車で送迎とか特別食堂で食事とか、特権があることを示さないと、部下も「自分の上司は軽すぎる」と思ってしまう。

 

⑤決断 合意志向orトップダウン

  合意志向:根回しして、皆の合意を得るの時間をかけるが、合意を得たら実行は一丸となって素早い。決断の意味合いが重く、なかなか変更されない。

  トップダウン式:トップがどんどん決めていくので決断は素早いが、変更される頻度も高い。

 

⑥信頼 タスクベースor関係ベース

  タスクベース:仕事とプライベートの信頼関係は別

  関係ベース:まずは個人的な人間関係を築かないと仕事も信頼できなくなる。

 

⑦見解の相違 対立型or対立回避型

  対立型:はっきりと賛成・反対等の意見を言う文化

  対立回避型:なるべく対立しないように婉曲的に意見を言うか、そもそも意見を言わない文化

 

⑧スケジューリング 直線的な時間 柔軟な時間

  直線的な時間:時間を守る。先々の予定を立ててその通り進める文化

  柔軟な時間:時間にルーズ。先のことは分からないのでかっちりとした予定は立てずに臨機応変に対応する文化

 

日本国内に居ても使える 

 この本はグローバル企業での異文化マネジメントをする人を対象としているが、実は日本に居ても使えると思った日本はハイコンテクスト、間接的な評価、応用優先、階層主義、合意志向、関係ベース、対立回避型、直線的な時間に分類される。特徴的なのが、どれも各指標のトップクラス特徴を持っていて、全く中間的な部分が無いことだ。個人的には、日本人はそこまで応用優先には思わないが、それは置いておくとして、これは日本にいても、社内の日常のコミュニケーションにも役立つのだと思う。日本全体がこの位置にいるとして、自分の会社、そして自分の周囲(同僚や上司、部下)がそれに対してどのカルチャー・マップに位置するのか?そしてなにより自分がどの位置にいるのかを知って、それに応じたコミュニケーションを取るということだ

 例えば、部下がタスクベースの人間だとしたら、飲みに誘うのは、個人的な関係を築くのには有効かもしれないが、仕事の信頼関係には影響しないかもしれない。また、トップダウン式の上司に対しては根回しは不要だったりとか。

 なお、コミュニケーションスタイルは相対的なので、日本人にとってはアメリカ人もイギリス人も同じくローコンテクストに見えるが、アメリカ人にとってはイギリス人はハイコンテクストらしい。

 

映画を見る視点を追加できる。

 自分はグローバルな経験をしたことが無いので、やっぱり海外の映画のシーンで、カルチャーマップの当てはめをしてしまうのだが、確か、『エル』というフランス映画の食卓シーンでやたらあーだこーだ議論していた記憶があるので、確かにフランス人は対立型だなとか思った。一方で、アメリカ人は中間に位置するけど、アメリカ東部を舞台にした『ナイブズアウト』では、誕生会で移民問題に関して賛成か反対かの議論シーンがあったように記憶していて、ここは言葉の選び方に差があるのかな、なんて思ったりした。映画も文化を意識しながら見ると一味違ってくるんだと思った。